2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

フレデリック・ワイズマン『アメリカン・バレエ・シアター』

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)という団体を撮ったドキュメンタリー。 ドキュメンタリー映画では、作者の顔が比較的よく見えるもの(作者が映像として映っているかどうかと言う意味ではなく、作者の人となりが映画から伝わってくるかどうかということ…

まだ寿命には早い

iPodが今週2回もフリーズした。 再起動も出来なくてその日一日は使えなくてけっこう困った。 ただの偶然であってくれればと思うのだが… 買ってから2年ちょっと。 もう2年とも言えるのかもしれないが、もうちょっと持ってもらわないと困る。 別にケチな根性か…

エルンスト・ルビッチ『山の王者』

ビデオ上映ではあるが、柳下美恵によるピアノ演奏付き。 もちろん伴奏付きのサイレントなど初めてだったが本当にすばらくて セリフの無い映画で音楽にいかに雄弁に語るかを目の当たりにした。 トーキーになってサイレントが持っていた映画の可能性の多くが失…

教養

「教養がある人は大抵みな雑学もあるので勘違いしやすいが、 教養は情報ではなく、情報単位の間の関係性を発見する力である」 というようなことを内田樹が書いていた。 「浅田彰と言えばみんな『なんでも知ってる』と言う人が多いが、 あれぐらいものを知っ…

キム・ギドク『うつせみ』

ギドクの映画の登場人物が喋らない理由については考えるだけ無駄ではないかと思わないでもないのだが(笑) とりあえず、ある種の制約を作ることによって、映画内で「出来ること/出来ないこと」をはっきりと分けてしまい、 それによって出来なくなることをバ…

他には何も残さなかった

喫茶店で武満の『死んだ男の残したものは』がかかっていて 聴いたのは数年ぶりだと思うのだがえらく感動してしまって 家に帰ってからCDを引っ張り出してきたり、 別のヴァージョンを図書館で借りてきたりして、 このところちょっとしたマイ・ブームになって…

曽根中生『不連続殺人事件』

これは自己言及的な映画なのだが、 単なるメタフィクション的な図式が導入されているだけでなく、 それが物語の形式と見事に一致しているところが面白い。 この映画にはほとんどアップのカットがない。 6人もの人間が殺され、総勢20人近い登場人物(ほとんど…

芸風

最近の土田晃之(1972年生まれ)は「自分語り」と「世代論」が目立つが、 その芸風は、お笑いと批評というフィールドの違いを超えて、 東浩紀(1971年生まれ)のそれとよく似ている。 己の思春期の頃の文化への思い入れ (土田:ひょうきん族、ガンダム/東…

トム・ジョンソン作品演奏会

音楽の三要素、リズム、メロディ、ハーモニーのうち、 ハーモニーは同時に鳴っている複数の音同士の関係に、 リズムとメロディは前後の音との関係によって成立する。 「音楽は音そのものではなく、音と音との関係を聴くものである」と言うこともできる。 「…

勘違い

祖父が病院に行くのに付き添ってきたのだが、 薬剤師に「朝こっちを飲んで、夜この丸いのを飲んでるっておっしゃってましたけど、逆なんですよ。昼間眠くなったりしませんでした?」と言われ 祖母が「やっぱり!最近どうも昼間ウトウトしてると思ったら…」と…

言葉の問題

↑の話を同居人にしているときに、僕が「素人童貞」という言葉を口にしたところ 「え?何それ?…えっと、素人?童貞?あ…もしかして素人としかそいうことしたことが?…違うな、玄人…だから…えーと逆か!…あ、なるほどぉ。そんな言葉があったんだ!」 と一人で…

『考え事]人生ってなんだろう

2年ほど同じ机で一緒に仕事をしてきた同僚がバツイチだったと最近知った。 あまりにも女性とのやり取りがぎこちないので、童貞説(失礼だな)まで出ていた人なのだが。 彼の幸せな結婚生活も、プロポーズする姿も、別れ話をする場面も、すべてが想像の範囲外…

ピーター・グリーナウェイ『ジョン・ケージ』

この前観た『グラス/モンク』と同じ『4 American Composers』シリーズ。 この前もアップリンクでケージの別のドキュメンタリーを観たが、 どちらも「これを観ればケージのことがわかる」というものではない。 というか、『サイレンス』や『小鳥たちのために…

こりん星のカバテッリ

さっきの『ウルルン滞在記』はすごかった。 あの番組であそこまでハラハラしたことなんてなかったし あそこまでほのぼの感も感動もないことなんてなかった(滅多に観ないけど) 別の意味での感動はあったが。 同居人は「こりん星のカバテッリ」というパスタ…

ダニエル・シュミット『ベレジーナ』

シュミットは蓮實重彦が「73年の世代」と呼んだ作家の一人である。 73年とはジョン・フォードが死んだ年であり、 つまりは映画の黄金時代が終わった後に映画を撮り始めた世代だということだ。 …とまぁ本を読むとそう書いてある。73年には僕は生まれてないの…

管理型権力

初めて六本木ヒルズで買い物をしたのだが、あそこの造りはおかしいと思う。 動線がおかしい、とでも言おうか。 真ん中に穴だの柱だのがあって対角線上に進めない。 点在する場所同士の自由なアクセスが寸断されていて ほぼ決まった順序で進まなければ目的地…

マリー=クロード・トレユ『合唱ができるまで』

ドキュメンタリーは何を撮りたいのかがはっきりしていたほうがいい。 それにはタイトルも重要だ。 『エドワード・サイード OUT OF PLACE』とか『ジョン・ケージ』とか、 サイードやケージの何を撮りたいのだあんたらは、と言いたくなってしまう。 そして実際…

ペース配分

大根やキャベツをきっちり半分に割って食べるなどということはもちろんしないが、 ウチでは、分けられるお菓子は基本的に半分づつである。 6個入りのアイスなら3つずつ、1ダースのチョコなら6つずつだ。しかし、僕と同居人では食べるペースが違っていて、 僕…

吉村公三郎『嫉妬』

この映画はラストで離婚した高峰三枝子が「一人で歩いてみたいと思うの」と言って終わるのだが、 『婚期』で彼女は離婚して自由に生きる女性の役を演じている。 あれはこの映画の主人公・敏子の将来の姿なのかもしれない、などと思う。 (名前も家族構成も違…

錯誤行為

家を出て駅に向かう途中で、CDの返却日であることに気付いた。 慌てて家に帰ってCDをまとめて再び家を出たのだが、 レコード屋についたところで鞄をあけると持ったはずのCDが入っていない。 手に持ったことは持ったのだが、帰ってみると玄関に置き忘れていた…

ピーター・グリーナウェイ『フィリップ・グラス/メレディス・モンク』

グリーナウェイがテレビ用に撮ったドキュメンタリーシリーズの一つ。 悪口は書きたくないので作品名は挙げないが、 「音楽ドキュメンタリーとはこれほどつまらないものなのか…」 と思わせる映画を最近何本も続けて観たので、とりあえず映像と構成の質の高さ…

ダニエル・シュミット『季節のはざまで』

70年代までの作品の中でのシュミットの「虚構」は ある種特殊な、異空間的な様相を呈していた。 80年代以降の作品では、虚構と現実の境は見た目にはむしろ明確になっているのだが、 虚構が現実を侵食する度合い、現実の中における虚構の濃度が高くなっている…

地獄のはざまで

僕や友人たちの間でながく頭痛の種であった不倫女が 最近、不倫相手を家から蹴り出したと聞いて 「これで彼女も地獄に落ちなくてすむ(笑)」と言って皆で喜んだ。先日偶然に彼女に会ったとき、これはその後の顛末を聞くチャンスだと思い、 (別に好奇心からで…

内田吐夢『大菩薩峠』

原作は読んだことがないが、 主人公・机龍之介は「人斬りに憑かれた男」のはずである。 お松の祖父を斬り殺す冒頭のシーンには何の説明もなく、 富士の見える美しい峠の風景となんの意味もない殺人、 お松の悲痛な叫びと龍之介の無表情の対比にハッと胸を打…

ケンカ

どうでもいいが、弓道は武道だそうだ。 柔道や空手をやっている人は強そうだが、弓道やってる人はケンカが強いのだろうか。 正直言ってあまり関係なさそうだ。 イメージ的にはほとんど文化系である(笑)では、剣道ではどうなのだろう。 もちろん棒切れを持た…

チャン・リュル『キムチを売る女』

固定ショットで捉えられた主人公スンヒの後ろでバサバサと木の葉がはためく(ただしステレオ)のを見て 「ああ、ストローブ=ユイレだな」と思ったのだが、 事前情報↓では監督のチャン・リュルは映画なんてほとんど観たことがない人のはずではなので少し戸惑…

今日の渋谷は弓だらけだった。 弓道の大会でもあったのだろう。 普段は年に一回見るか見ないかという弓だが、 そういうものでも見るときはまとめて見るものである。 ところで弓道は武道なのか。

ダニエル・シュミット『トスカの接吻』

ヴェルディが「自分より幸福でなかった音楽家たち」のために作った養老院のドキュメンタリー。 ヴェルディの著作権が切れてからは苦しい経営だと言ってたけど、今でも残ってるみたいですね。 カンツォーネもオペラも普段は聴かないけれど 老人たちの歌う歌に…

理解しあえなくても共有はできる

最近、知人に恋人が出来たらしいのだが、 シュミットの映画でたまたま会ったときに一人だったので (まぁいつも二人でいるというわけでもなかろうが) 「彼女できたらしいじゃない。一緒に来ないの?」と聞いたところ 「シュミットの映画とか観る人じゃない…

ダニエル・シュミット『ヘカテ』

モロッコの日差しは強く、その日差しに照らされたものは濃い影を落とす。 主人公ロシェルの顔にも、木の、鉄柵の、窓枠の、影が射しその顔が晴れることはない。 もちろんそれはクロチルドの影を象徴する。 彼はクロチルドの影から逃れることはできない、とい…