2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

アニエス・ヴァルダ『幸福』

ヴァルダを劇場で観るのは初めてでしたが素晴らしい光の美しさ。 夏の強い日差しに照らされた草むらと 濃い影が出来た木陰の強いコントラスト。 それと対応するような、まだ暗くなってはいないものの やや日が傾いた夕暮れ前の柔らかい日差し。 帰り道の車の…

12月の踊るロード賞!

アンゲロプロス『霧の中の風景』 溝口健二『お遊さま』 ロメール『愛の昼下がり』 アニエス・ヴァルダ『幸福』 ジャン=リュック・ゴダール&ジャン=ピエール・ゴラン『万事快調』 けっこういっぱい観たんですけど、 溝口とヌーヴェルヴァーグでほとんどな…

12月の踊るヒット賞!

The Matthew Herbert Big Band『Goodbye Swingtime』 Tujiko Noriko『少女都市+』 Pierre Bastien『CAT 119 Mecanoid』 Adriana Calcanhotto『Parangoue Pamplona』 Ikue Mori『Labyrinth』 マシュー・ハーバートのビッグバンドは素晴らしいです。 今年買っ…

友情の複雑さについて

ロメールの映画なんか特にそうですが、 欧米人の男女は本当にスキンシップをよくしますよね。 頬を合わせて軽くチュッとするのは挨拶なのかもしれませんが 友達同士でも普通に手を握ったり、肩に手を回したり。 あれは単なる親愛の情を表しているだけでなく…

フィジカル!

小さいライブハウスでライブを観てきました。 目の前で生楽器の演奏を見るというのが久しぶりで、 演奏が始まると、もう曲がどうこういう以前に、 低音からウワーッと立ち上がるヴァイオリンの音だけで 全身に鳥肌が立ってしまいます。普段パソコンで音を作…

ジャック・ドゥミ『ロバと王女』

僕が観たことがあるドゥミの長編は数えてみたら6本でしたが 『ロシュフォール』までと、この『ロバと王女』より後で 随分と断然があるように感じます。 『ロシュフォール』が66年、この映画が70年で 間に68年があるので、それが関係しているのかもしれませ…

懐メロ

同居人がどこぞで拾ってきた「R25」に 氷室京介のインタビューが載ってまして。 こんなこと言っては大変失礼ですけど、 「現在の」氷室の音楽を聴きたいと思ってる人は少数のはずです。R25読者(25歳位がターゲットらしい)は BOOWY(←変換わからん)の頃や…

エリック・ロメール『クレールの膝』

今回「六つの教訓話」シリーズのうち5話を観たのですが 基本的な方法というか発想は『獅子座』のころから変わっていなくて 一つのアイデアのバリエーションを少しずつ煮詰めて 同じように見えながらも全く別のものを作り上げていくかのような。 軽快で洒脱…

パターン

別に「男のくせに」というニュアンスはなかったのかもしれませんが、 レース編みが好きなの?と意外そうに聞かれてしまったのだけど ミニマル・ミュージック好きとしては モワレとかレースとかいった細かいパターンは外せないものなのです。僕はコム・デ・ギ…

エリック・ロメール『愛の昼下がり』

ベルトランにとってのシュザンヌがそうであったように 一見するとクロエという不気味な他者がフレデリックの前に表れる という話のように思えますが、それは正確ではなくて クロエと出会うことでフレデリックが昔の自分、 あるいは自分でも気付いていなかっ…

地図

父が上京していて、妹と3人で話していた時 小学校の頃住んでいた街で僕らがよく遊んでいた川が、 どう流れていたかで意見が割れました。「あの団地の裏をぐるっと回って流れていた」だの 「幼稚園の向こう側だったような気がする」等等。 父と妹は地図を描い…

ジャン=リュック・ゴダール&ジャン=ピエール・ゴラン『万事快調』

イブ・モンタンとジェーン・フォンダ主演のメロドラマ と見せかけて中身はアジテーション映画だけれど、 実を言うとやはりこの映画はすれ違う人々を描いたメロドラマです。もちろん主にすれ違っているのは別の階級同士、 資本家と労働者、記者と資本家、組合…

クリスマス

23日 フィルムセンターに行ったら係の人がなにやら客の数を数えている、 と思ったら僕の3人前で「申し訳ありません。本日満席です」っておい! どうやら立ち見はできないようですね。しょうがないから銀座をぷらぷらしようかと思ったら 同じく間に合わなかっ…

テオ・アンゲロプロス『蜂の旅人』

コミュニケーションは失敗することもあるし、 たとえ気持ちが通じ合ったかに見えても それは人の持つ巨大な精神の中のかすかな部分であって 結局人は永久に一つにはなれない。 この映画はどちらかと言えば、 そういったコミュニケーションの残酷な側面に焦点…

strange paradise

J.L.G.の"マリア"をレイトショーで観てた そんな小さな幸福わかち合うあなたはいない この歌を聴いたのは高校生のころだったでしょうか。 それ以来、僕の憧れは、 女の子と『ゴダールのマリア』をレイトショーで観ること。 なわけですが「そんな小さな幸福」…

ヴィム・ヴェンダース『アメリカの友人』

嗚呼、やりきれない…この一言に尽きます。 こんなやりきれないだけの映画がなんでこんなにカッコイイんでしょう。 ヨナタンもトムもやりきれないことでしょう。 でも彼らは泣いたりわめいたりもせずいつも気だるく虚ろです。 と言ってはみたものの↑には若干…

奴らを高く吊るせ!

亀田一家のことは全然好きではないですが 持ち上げるだけ持ち上げといて狂ったように貶めるマスコミや それに同調して叩く連中は、本当に無分別でバカで醜い。しかし、そうやって奴ら(バッシングする連中)を批判することは 即座に奴らと同じ土俵に立つこと…

テオ・アンゲロプロス『霧の中の風景』

ロメールの映画のシュザンヌやポールは 映画の中で何者でもない存在になっていくわけですが この映画の二人の姉弟は子供ということもあってか始めからそのような存在です。警察署で窓の外に雪が降り出したとき、 周りの大人たちはその時にだけ「警察官」だっ…

テオ・アンゲロプロス『こうのとり、たちずさんで』

この映画は越境者の映画でもあり、越境せざる人々の映画でもあります。 境界とは国境はもちろんのこと、 公開当時は世界的にはそれほど顕在化していなかったであろう 民族の境界のことでもあります。 (追記:1992年の映画だから、やっぱり顕在化してたかな…

Let's sing!

「English only Karaoke」をやりました。 やるとわかっていれば前日にヘッドフォンしながら歌詞を見る とか予習の一つもやって行ったのですが 突然行くことが決まり、そんな猶予はなかったのでした。僕が歌ったのは Megadeth "Symphony of Destruction" Mich…

ペドロ・アルモドバル『ライブ・フレッシュ』

アルモドバルは生成変化する者、別人になる人、 というのを一貫して撮り続けているのですが この映画では5人の主要人物たちがそれぞれ別の変化を生きています。クララ以外の4人は4年前の事件に決定的に影響を受けてしまい 否応なく別の者に変化することを…

品揃え

「これだけマンガ喫茶があるんだから一軒くらい 『わかってる』店があってもいいんじゃないか」 みたいなことをよしもとばななが書いてまして。僕はマンガが「わかってる」人ではないですが やはり今の漫喫の品揃えには不満がないではないので そうだよなぁ…

溝口健二『お遊さま』

これはエロいです(笑) 溝口の描く女は誰もが独特の艶を持っていますが 谷崎の原作となるとここまでエロくなるとは、いやはや。もちろん田中絹代と堀雄二は生涯プラトニック、 田中が嫁ぐまでは乙羽信子と堀雄二も夫婦と言う名の兄妹ですから 性器的なエロス…

借りる前に試聴しておけば!

借りてきたCDを聴いてみたら聴き覚えがあったので 探してみたら持ってるやつでした。 「持ってるやつ借りてきちゃったよー、ほらこれ」 と同居人に見せたら「私も持ってるよ」と言われました。1度間違うのも2度間違うのも同じだけど なんか踏んだり蹴ったり…

アレクサンドル・ソクーロフ『精神(こころ)の声』

タジク/アフガンの国境紛争のドキュメンタリー、 ウェブには5時間半を「一挙上映」と書いてあるので びびって劇場に電話したところ「1話ごとに休憩いれます」とのこと。 しかし休憩入りでもかなりハードでした。 いつもは満席に近くなる新文芸坐オールナイ…

天山/元木

学生時代に友人が、コンサートの司会で 「新日本プロレスの天山広吉って選手がいまして、 巨人で言うと元木ぐらいの選手なんですけど…」 てなことを言いまして。天山はその後IWGPもG1も取ったし、元木は引退したので状況が変わってますが 当時、天山の上には…

エリック・ロメール『獅子座』

『シュザンヌ』では、非常にわかりやすく愚かなキャラクターだった彼女が 最後の最後にどんでん返し的に反転して 不気味でとらえどころのない存在に変身したわけですが この映画の主人公ピエールは 100分かけてゆっくりとそのような存在に変身していきます。…

余計な心配

映画制作には莫大なお金がかかるという話はよく聞きます。 『メルキアデス』にどのくらいのお金がかかったか知りませんし、 トミー・リー・ジョーンズが俳優としてどれくらい稼いでいるかも知りませんし、 彼がこの映画のために私財を投じたかどうかも知りま…

溝口健二『祇園の姉妹』@フィルムセンター

この映画の山田五十鈴は本当にイヤな女で 僕が深見泰三でもたたき殺してやろうかと思うだろうって感じですが それよりもまず彼女のことを美しいと思う。フィクションのキャラクターなんてみんなそうだと言われそうですが 例えば『シュザンヌの生き方』はとて…

具現化されたものよりも重い時間がある

『NANA』の主人公ナナは惚れた男、蓮の名前からとって 蓮の花の刺青を腕に彫ってるわけですが、それを見た同居人は僕に 「あんたに惚れた女はブタの刺青を彫るのかねぇ」とおっしゃる。 似てはいるけど僕の名前の字は「豚」ではないのですが そんなことは本…