2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ジャック・タチ『ぼくの伯父さん』

この映画は脱中心の映画だと言えようか。 中心がないのではなく、中心が絶えず無化される映画なのである。 野良犬が駆けまわる冒頭のいくつかシーンでは、まず画面中央に数匹の犬を捉え、そこに黒い犬が画面の外からフレームインしてくるシーンが、場所と構…

断食

プチ断食をしてみました。 前日の夕食を食べたあと、次の日の夕食まで約24時間食事を取らないというイスラムのラマダン式。 野菜ジュースと生姜入りの紅茶を交互にとる。お茶は飲んでよい。 1日たったら少なめのお粥と味噌汁で回復食。これで悟りがひらけま…

観ていてキツイ映画

アニエス・ヴァルダのドキュメンタリー『ジャック・ドゥミの世界』も同時に上映されたのだが、英字幕の予定がミスで無字幕のフィルムが送られてきてしまったらしく、まったく内容のわからないフランス語の映画を90分も観ることになってしまった。 というか僕…

ジャック・ドゥミ『ロワール渓谷の木靴職人』

先日の「円環する時間」という語の言い換えになるが、ドゥミの映画では反復する主題が何度も出てくる。 『ローラ』の主人公・踊り子のローラは水兵の恋人を何年も待っているわけだが、彼女の小さい頃によく似ているらしく、水兵のフランキーに恋をし、踊り子…

アンヌ=マリー・ミエヴィル/ジャン=リュック・ゴダール『ゴダールのマリア』

「そんな小さな幸福 わかちあうあなたはいない」のは相変わらずだが、 過去2回ほど観ているはずで、完全に忘れていた自分に驚きなのだが、 『マリア』は、ゴダールの『こんにちは、マリア』のエヴィルの短編『マリアの本』の2本からなる映画で、最初は『マリ…

お泊り

ウチの同居人は「外泊します」とか「今日は帰りません」とは書かずに、 なぜか「明日帰ります」とメールしてくる。 妙な口癖だ。口じゃないけど。

ジャック・ドゥミ『天使の入江』

ティーチインでラランヌも言ってように、ドゥミの人生が投影された映画である。 60年代のドゥミはハッピーエンドではないものの、愛の賛歌とでも言うべき映画を撮っているが、 この映画は、愛し合う男女を撮ってはいるものの、最後まで気だるく退廃的なトー…

グチを二つ

その1 今回のドゥミの特集上映は午前とお昼にやった後、夜の上映までの間に5時間ほど空きがあった。 僕は昼と夜に一本ずつ観た日が3日あって、 最初の二日こそ買い物して時間をつぶしたのだが 5時間もうろうろしたあとで映画を観るのがえらく疲れるので 昨日…

マックス・オフュルス『たそがれの女心』

ダイヤの耳飾をめぐる物語であるこの映画は、上記の「結晶の罠」のテーマ通りの映画だと言えよう。 物語はルイーズが結婚記念にもらった耳飾を金に困って売り払うところから始まる。 これは軽率で身勝手な性格を表し、同時に夫への愛が醒めていることを示す…

ティーチイン

プロデューサーのジャン=マルク・ラランヌによるティーチインがあったので、僕が面白いと思ったとこだけ要点を。 メモも取ってないし不正確なので信じないように(笑) 1、ドゥルーズの『シネマ』によれば、時間を線的に描く作家と円環する螺旋のように描く作…

ライブ・ミュージックの可能性

音楽は時間芸術である。これはまぁ普通に考えればわかる。 誤解されがちだと思うのは、音楽は「今ここ」に現れて消えていく音による「現前性」の芸術では必ずしもないということだ。 (「必ずしも〜ない」であって、現前性とは無関係ということではないので…

スニーカー

歩いていたら靴のソールの部分がパカッと取れてしまった。 ナイキのハイテクは2足目だが前のも寿命が短かった。もう二度と買うまい。 しかし街中で靴が壊れるのは悲劇ですな。 ヒールが折れてしまった女性の気持ちがわかった気がする。 関係ないけど、ニュー…

ジャック・ドゥミ『ローラ』

はじめて観た時から、そして何度観ても変わらない僕のオールタイムベスト。 何度も観ても…いや、思い出すだけでも勃起してしまいそう… この映画のすばらしい叙情性は、矛盾するようだが、クールでドライな描写のさわやかさに拠っている。 ひとつひとつのシー…

独唱

もともと独り言は多いほうなのだが、この前のは最高に酷くて 「ビーリージーン、ズノッマイラーヴァー、アッ!」 とまぁご丁寧にシャウトまで入れて歌ってしまった。 電車の中で。けっこうデカイ声で。 しまった!と思った時にはすでに遅し。 隣の席も前の席…

ジャン・コクトー『美女と野獣』

待ちに待ったフランス映画祭ジャック・ドゥミ特集。 しかし平日の昼間とはいえ客が30人くらいとはどういうことか。 シュミットもギドクもあんなに大入りだったのに…。 コクトーの才は物事の本質、ないし特質を捉える能力にあると言えようか。 本質という言葉…

『絶対の愛』続き

僕が観た限りでは、ギドクの映画の女たちは一人の例外もなく全員がなんの理由もなく男を受け入れる(もちろんギドクは確信犯的にそうしているわけだ) ギドクはおそらく因果関係、例えば「なぜ彼女は彼を愛するのか」という理由の説明にまったく関心がない。…

キム・ギドク『絶対の愛』

「生産者の顔が見える」などという時の「顔」とは「どこの誰か」ということであり、つまりはその人のアイデンティティのことである。 言い換えれば、アイデンティティとはまず顔のことだということでもある。 もちろんこれは極端な言い方であって、 普通に考…

愛される女

一緒に雑誌を眺めているとき、ウチの同居人は恋の体験談やテクニックに対してとてもシビアな発言をする。 まぁ僕だって「くだらねぇ」と思う記事がないではなないけれど、自分では経験したことがないことに対しては基本的には「そんなものなのかしらん」とい…

美の基準

安野モヨコはマンガでもエッセイでも「めかす」と言う言葉をよく使うのだが、 絵を見ても前後の文を読んでもキャラ、あるいは彼女自身がどこをどう「めかして」いるのかいまいち掴めない、というような話を前に同居人としていた。 我々と安野のファッション…

白い恋人たち

ホワイトデーだからと思って同居人にプリンを作ったのだが、 「私、バレンタインに何もあげてないけどね」と言われてはじめて気づく悲しさよ。 まぁ食べたかったからいいのさ。 なぜか同居人とその彼氏と3人で過ごすホワイトデー。 料理をふるまってもてなす…

キム・ギドク『受取人不明』

喋らないキャラクターもいないし恋愛が主軸でもない、ギドクとしては変わった映画。 まぁ『サマリア』もそうだけど。 どうでもいいけど、日本で公開されてるギドクの映画は大体観たけど僕はこれがベスト。 ギドクの映画に性関係を主軸にしたものが多いのは、…

そんなことあるわけないよね

ハードオフでBOSEのヘッドフォンが定価の3分の1くらいで売っていたので、リスニング用に買ってみた。 聴きなれた曲を聴いても「なんか今まで聴いたこともないような音が聞こえる!すげー!」 と驚いたのだが、よく見たら左右が逆だった。

成瀬巳喜男『流れる』

田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子と豪華絢爛な役者陣。 この4人が同じ画面に納まっているというだけでうっとりである …と言いたいところだがこれは嘘で、役者を揃えれば誰でもこんな映画が撮れるわけではない。 むしろ普通なら逆の事態が起こる。 …

無為に時間の流れる

買い物の途中「ちょっと歩くけど行きたい店がある」と連れが言うので行ってみることにしたのだが、 道に迷ったりして30分くらい歩いた挙句、行ってみたらつぶれて違う店になっていた(笑) さて、これは笑い話であって僕は文句を言いたいわけではない。 「ちゃ…

純粋な音楽ファンのための音楽論

『Fashion News』で菊地成孔が『服は何故音楽を必要とするのか』という、ショーで使われた音楽の分析をする連載をしている。 たまに立ち読みで読んだりするだけできっちりフォローはしていなかったのだが、 家にある分をまとめて読んでみたら(と言っても5冊…

モノを大切に

iPodの調子が悪いという話をしたら 「僕はハードディスク型の音楽プレイヤーは信用してないんだよね。フラッシュメモリーのほうがいい」と言われた。 まぁ言われてみればその通り。HDDは不安定である。 「モノを大切に」などとこの前は書いたが、 大切にする…

黒沢清『叫』

僕たちが今現在において感じている意識というものは、この映画の冒頭で殺人事件が起こる埋立地のようなものである。 土が盛られ、道が引かれ、マンションが建ち、木さえ植えられたりもするのだろうが、 そのような景観はかりそめのものでしかなく、そこが海…

うまい!…らしい。 僕は家で酒を飲まないので知らないのだ。 せっかくだから一本くらい飲もうかな。

セドリック・クラピッシュ『スパニッシュ・アパートメント』

フィリップ・ガレルにとっては68年の経験とそれに続くニコとの生活はとても大きなもので、おそらく彼にとって現在とは68年の延長として考えられるような時間の中にある。 彼にとっては、68年を描くことは現在を描くことであり、現在について何か考えるなら68…

2月の踊るロード賞!

ダニエル・シュミット『トスカの接吻』 エルンスト・ルビッチ『山の王者』 チャン・リュル『キムチを売る女』 マキノ雅弘『次郎長三国志 第五部』 キム・ギドク『うつせみ』 なんだかんだで新作をあまり観ていない。 去年に比べればいいペースだが。 去年の…