映画

フランソワ・トリュフォー『突然炎のごとく』

もちろん三人の幸福なバカンスや後半のお涙頂戴な話も好きなのですが、僕はカトリーヌが出てくる前、ジュールとジムがテレーズという女の子と過ごすところがとても好きなのです。 テレーズがタバコの煙を吐きながら機関車のまねをして走るシーンで、彼女は意…

アキ・カウリスマキ『マッチ工場の少女』

この映画は、冒頭で材木からマッチが作られていく様子が描写され、ラストは主人公イリスがいなくなった工場がなおも稼働し続ける様子を映して終わります。 また、天安門事件などの(当時の)タイムリーなニュース映像が執拗に挿入されますが彼女は決まってそ…

6月の踊るロード賞

成瀬巳喜男『浮雲』 アキ・カウリスマキ『過去のない男』 曾根中生『わたしのSEX白書 絶頂度』 神代辰巳『恋人たちは濡れた』 フランソワ・トリュフォー『私のように美しい娘』 今、メインマシン(win)が動かないのでマックで書いているのですが、「なるせ…

アキ・カウリスマキ『過去のない男』

救世軍の女性スタッフ・イルマは主人公の男(マルック・ペルトラ)にデートに誘われるのですが、そんなことには慣れていないらしい彼女は化粧品を前にして少し戸惑ったような微妙な表情でマスカラをつけます。 そして男の家に食事に来た彼女の口紅は少しだけ…

宮崎駿『天空の城ラピュタ』

映像は僕たち人間の視覚を模して作られた技術です。 しかし映像は僕たちの見ているいわゆる現実の模造ではありません。 映像はそれ独自の論理に従って作られており、現実とは別種のリアリティを持ちます。 と言っても映像と現実とは関係がないということでは…

アモス・ギタイ『フィールド・ダイアリー』

パレスチナ問題を扱った映画と言えばゴダールの『ヒア&ゼア』があります。 あくまで傍観者でしかないフランス人・ゴダールとパレスチナとの距離を扱ったものですが、イスラエル人・ギタイにはそのような距離はなく、当事者的視点から撮られることになります…

5月の踊るロード賞!

カール・ドライエル『裁かるるジャンヌ』 ジガ・ヴェルトフ『カメラを持った男』 F・W・ムルナウ『サンライズ』 エルンスト・ルビッチ『陽気な巴里っ子』 相米慎二『台風クラブ』 トーキーが一本しかありません。 シネフィルっぽいラインナップです(笑)

曽根中生『わたしのSEX白書 絶頂度』

タイトルを見ればわかる通りポルノ映画であり、劇中にはたびたび濡れ場があって、一応それを中心に映画が組み立てられてはいます。 しかしこの映画では濡れ場は中心であって中心ではありません。 一定量の濡れ場があれば内容を問われなかったこの時代のポル…

宮崎駿『紅の豚』

最近、必死になって美術の勉強をしているwbntです。こんばんわ。 マレーヴィチは革命前後のロシアに生きた人ですが、20世紀初頭に起こった未来派の影響を強く受けています。 先日、ソ連のサイレント映画の巨匠、ジガ・ヴェルトフの映画を観たのですが、機械…

4月の踊るロード賞!

ハワード・ホークス『紳士は金髪がお好き』 ジョン・フォード『わが谷は緑なりき』 ジョセフ・ロージー『唇からナイフ』 相米慎二『ションベン・ライダー』 小川紳介『ニッポン国古屋敷村』 ここ20年以内の映画が一本もありませんね(笑) もちろん新作も観て…

相米慎二『魚影の群れ』

思春期の子供たちの映画をいくつも撮っている相米慎二ですが、この映画を観て思ったのは、彼は必ずしも思春期を特権的なものとして考えていたわけではなかったのではないか、ということです。 マグロ漁師を描いたこの映画にはティーンエイジャーなど一人も登…

相米慎二『ションベンライダー』

冒頭のワンシーン・ワンショットはすごい。 いったいあれは何なのだ!と思って帰ってから調べてみたら、有名なシーンらしいですね。 二人のヤクザを上から見下ろすショットからはじまり、彼らの移動を横に追い、壁を乗り越えてプールにいる主人公たちを登場…

相米慎二『セーラー服と機関銃』

相米慎二の長回しはなぜかあまり長さを感じさせません。 同じくワンシーン・ワンカットを得意とするアンゲロプロスやストローブ=ユイレの映画では、ワンシーン・ワンカットの執拗さに否応無くジリジリとさせられ、その時間の中に物語の外部が侵入し、それが…

ジム・ジャームッシュ『ストレンジャー・ザン・パラダイス』

平日の昼間にDVDの上映にわざわざやってくる人などいないらしく客は僕一人でした(笑) 観ればわかるとおりこの映画では一切何も起こらない。 何も起こらないけれども物語は確実に動いている。 この「何も起こらないけれど動いている」という状態を説明するの…

ジャック・ドゥミ『思い出のマルセイユ』

ドゥミの映画ではしばしばすれ違いが重要なテーマになる。 この映画では、モンタンはマリオンが昔の恋人の娘だと知らずに自分の舞台に出演させ、 マリオンは自分が演じている役が自分の母のことだと言うことを知らない。 母ミレーヌはもちろんモンタンのこと…

ジョセフ・ロージー『唇からナイフ』

タイトル通りの映画である。 意味がわからないって?つまりは意味がわからない映画なのだ。 いい邦題だと思う。原題は知らんけど。 スパイ映画の醍醐味は思いもよらぬもの同士を結びつけたり、思いもよらぬ方法で使ったりできることにある。 唇からナイフが…

3月の踊るロード賞!

ジャック・ドゥミ『ローラ』 成瀬巳喜男『流れる』 黒沢清『叫』 ジャン・コクトー『オルフェ』 ジャン=リュック・ゴダール『ゴダールのマリア』 ものすごく楽しみにしていたジャック・ドゥミ特集ですが、日本語字幕なしが多くてちょっと萎えます。 蓮實重…

ジャック・タチ『ぼくの伯父さん』

この映画は脱中心の映画だと言えようか。 中心がないのではなく、中心が絶えず無化される映画なのである。 野良犬が駆けまわる冒頭のいくつかシーンでは、まず画面中央に数匹の犬を捉え、そこに黒い犬が画面の外からフレームインしてくるシーンが、場所と構…

観ていてキツイ映画

アニエス・ヴァルダのドキュメンタリー『ジャック・ドゥミの世界』も同時に上映されたのだが、英字幕の予定がミスで無字幕のフィルムが送られてきてしまったらしく、まったく内容のわからないフランス語の映画を90分も観ることになってしまった。 というか僕…

ジャック・ドゥミ『ロワール渓谷の木靴職人』

先日の「円環する時間」という語の言い換えになるが、ドゥミの映画では反復する主題が何度も出てくる。 『ローラ』の主人公・踊り子のローラは水兵の恋人を何年も待っているわけだが、彼女の小さい頃によく似ているらしく、水兵のフランキーに恋をし、踊り子…

アンヌ=マリー・ミエヴィル/ジャン=リュック・ゴダール『ゴダールのマリア』

「そんな小さな幸福 わかちあうあなたはいない」のは相変わらずだが、 過去2回ほど観ているはずで、完全に忘れていた自分に驚きなのだが、 『マリア』は、ゴダールの『こんにちは、マリア』のエヴィルの短編『マリアの本』の2本からなる映画で、最初は『マリ…

ジャック・ドゥミ『天使の入江』

ティーチインでラランヌも言ってように、ドゥミの人生が投影された映画である。 60年代のドゥミはハッピーエンドではないものの、愛の賛歌とでも言うべき映画を撮っているが、 この映画は、愛し合う男女を撮ってはいるものの、最後まで気だるく退廃的なトー…

マックス・オフュルス『たそがれの女心』

ダイヤの耳飾をめぐる物語であるこの映画は、上記の「結晶の罠」のテーマ通りの映画だと言えよう。 物語はルイーズが結婚記念にもらった耳飾を金に困って売り払うところから始まる。 これは軽率で身勝手な性格を表し、同時に夫への愛が醒めていることを示す…

ティーチイン

プロデューサーのジャン=マルク・ラランヌによるティーチインがあったので、僕が面白いと思ったとこだけ要点を。 メモも取ってないし不正確なので信じないように(笑) 1、ドゥルーズの『シネマ』によれば、時間を線的に描く作家と円環する螺旋のように描く作…

ジャック・ドゥミ『ローラ』

はじめて観た時から、そして何度観ても変わらない僕のオールタイムベスト。 何度も観ても…いや、思い出すだけでも勃起してしまいそう… この映画のすばらしい叙情性は、矛盾するようだが、クールでドライな描写のさわやかさに拠っている。 ひとつひとつのシー…

ジャン・コクトー『美女と野獣』

待ちに待ったフランス映画祭ジャック・ドゥミ特集。 しかし平日の昼間とはいえ客が30人くらいとはどういうことか。 シュミットもギドクもあんなに大入りだったのに…。 コクトーの才は物事の本質、ないし特質を捉える能力にあると言えようか。 本質という言葉…

『絶対の愛』続き

僕が観た限りでは、ギドクの映画の女たちは一人の例外もなく全員がなんの理由もなく男を受け入れる(もちろんギドクは確信犯的にそうしているわけだ) ギドクはおそらく因果関係、例えば「なぜ彼女は彼を愛するのか」という理由の説明にまったく関心がない。…

キム・ギドク『絶対の愛』

「生産者の顔が見える」などという時の「顔」とは「どこの誰か」ということであり、つまりはその人のアイデンティティのことである。 言い換えれば、アイデンティティとはまず顔のことだということでもある。 もちろんこれは極端な言い方であって、 普通に考…

キム・ギドク『受取人不明』

喋らないキャラクターもいないし恋愛が主軸でもない、ギドクとしては変わった映画。 まぁ『サマリア』もそうだけど。 どうでもいいけど、日本で公開されてるギドクの映画は大体観たけど僕はこれがベスト。 ギドクの映画に性関係を主軸にしたものが多いのは、…

そんなことあるわけないよね

ハードオフでBOSEのヘッドフォンが定価の3分の1くらいで売っていたので、リスニング用に買ってみた。 聴きなれた曲を聴いても「なんか今まで聴いたこともないような音が聞こえる!すげー!」 と驚いたのだが、よく見たら左右が逆だった。