具現化されたものよりも重い時間がある

NANA』の主人公ナナは惚れた男、蓮の名前からとって
蓮の花の刺青を腕に彫ってるわけですが、それを見た同居人は僕に
「あんたに惚れた女はブタの刺青を彫るのかねぇ」とおっしゃる。
似てはいるけど僕の名前の字は「豚」ではないのですが
そんなことは本題とは関係ありません。

もう10年以上前になりましょうか。ジョニー・デップ
当時の恋人ウィノナ・ライダーの名前を刺青で彫っていると聞いて
「なんてバカなヤツだろう。別れたらどうするつもりか。
次に付き合うかもしれない人のことを考えてるのか」
と思ったものですが、今考えるとこれは間違っているように思います。

ナナもデップもそれを後悔しているようにはとても見えませんし
ヤスもヴァネッサ・パラディ
そんなことは承知の上で今の彼女(彼)を好きなのでしょう。

刺青の有無に関わらず、デップという人間には
ウィノナと過ごした時間が刻み込まれている。
それは別に昔の恋人とのことに限ったことではなくて
彼のすごした少年時代や読んだ本、出演した映画のこと…
全てがあわさって今のジョニー・デップという人間は形作られている。

デップの刺青には彼とウィノナの過ごした時間の
ほんの一部が結晶化して表れているにすぎません。
ヴァネッサが何をしようともその時間を消すことはできない。
彼女はそれを受け入れる以外にない、
というか受け入れたから結婚したんでしょう(してなかったかな?)

まぁ服を脱ぐたびに昔の恋人の面影が見えたら
(どこに彫ってあるのか知りませんが)
ちょっぴり傷つくことはあるかもしれません。
しかし、恋人の名前を刺青で彫っちゃうような人間だからこそ
ヴァネッサもヤスも彼(彼女)を好きになったわけですよ、たぶん。