『絶対の愛』続き

僕が観た限りでは、ギドクの映画の女たちは一人の例外もなく全員がなんの理由もなく男を受け入れる(もちろんギドクは確信犯的にそうしているわけだ)
ギドクはおそらく因果関係、例えば「なぜ彼女は彼を愛するのか」という理由の説明にまったく関心がない。
ギドクにとっては「なぜか彼女は彼を愛した」という出来事の絶対性こそがすべてなのだ。


『悪い男』や『うつせみ』の主人公は完全に社会から逸脱したアウトサイダーなので
女たちが彼らを「なぜか」愛してしまうのを、観客は呆気にとられながらも納得させられてしまうのだが、
『ワイルドアニマル』やこの映画のジウのような普通の人(というよりむしろダメな奴)だと、「なぜこいつがモテモテなのか」という展開の唐突さが目に付いてしまう。
やはり普通の愛よりも「絶対の愛」を撮るのに向いた人なのだ。