課題のための試論

マレーヴィチの人物画では、身体が筒状のパーツの組み合わせとして描かれ、上半身と腰に左右逆の影がついているものがいくつかあります。(*1)
また、後期の作品では頭、首、上半身…が様々な色に塗り分けられているものがあります。(*2)


これは、それらが別々のオブジェクトとして扱われていたことを意味します。
それらが三次元空間の制約を離れて存在するなら(マレーヴィチは四次元に惹かれていたそうです)シュプレマティスム期の、浮遊するように軽く、上下の感じられない絵になります。(*3)


逆に言えば、三次元の重力下では、人体のような統一された形態を持ち、なおかつそれぞれは有機的に結びつかずにいつでもパーツに分解可能です。(*4)


それから、マレーヴィチの描く四辺形や円は何の意味ももっておらず、建築や工業製品においても機能主義的な志向は一切ありません。
つまり、分解可能なパーツと言っても、それらのパーツがポットの取っ手や注ぎ口にそれぞれ対応するわけではないということです。(*5)


1 http://www.artchive.com/artchive/M/malevich/reaper.jpg.html
2 http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Malevich.jpg
3 http://www.artchive.com/artchive/M/malevich/suprema1.jpg.html
4 http://www.russianavantgard.com/Artists/malevich/malevich_arkchitechton_beta.html
5 http://www.russianavantgard.com/Artists/malevich/malevich_teapot.html


あまり関係ないですが、マレーヴィチシュプレマティスムを普遍的な芸術理論として考え、友人の作曲家と「シュプレマティズム音楽」なるものを構想していたそうです。
まったく資料は残っていないようですが、どんなものだったのか考えてみるのも面白そうです。