昨日の続き

幻想を見るのが人間だというようなことを書きましたが
野生生物にもこの種の幻想のようなものがあるとユクスキュルが書いてまして
「魔術的環世界」と彼は呼んでいます。

ある種のカミキリムシは柔らかい果実の中で変態するのですが
この果実は幼虫が蛹から成虫になるまでの間に硬くなるので
幼虫は変態の前にあらかじめ成虫になったときに這い出るための穴を掘っておく。
この穴は、掘られる時点では幼虫にとっては必要のないものだし
掘り進むための何の指標もないような穴なのです。

かのカミキリムシには「ないはずの穴が見えている」と言えるわけで
かの盲目の老女の絵と似ています。
もしかするの人間の見る幻想は
野生生物の見る魔術的世界に由来するのかもしれません。嘘ですが。