ベルナール・エベール『ラララ・ヒューマン・ステップスinベラスケスの小さな美術館』

同居している方が借りてこいと言うので借りてきたビデオで
全く予備知識なしで観た映画です。と最初に言っておきましょう。
モダンバレエだかモダンダンスだか(違いがわかりません)の
ダンサーたちがベラスケスの絵の中の世界で踊りまわるお話。

物語仕立てのダンスという素材は映画と相性がいいと思う。
どんな映画でも(アニメであれドキュメンタリーであれ)
ある程度は現実を模倣であり
(そうでなければ有意味な映像ではなくただのノイズになってしまう)
どんな映像でもそれが映像であるかぎり現実ではなく
(そこに映っているのは長澤まさみではなく長澤まさみの像である)
しかしそれは映像としての実質をもった現実でもある。
(「長澤まさみの映像」は本人と別の実体としてフィルムに刻み付けられる)

模倣や虚像を超えて
映画的な現実とでもいうようなものが表れる瞬間こそが
映画の最も面白いところなのですが
セリフのないダンス映画、しかもフィクションというこの映画には
そのような瞬間が明確に表れるわけです。

超絶的な技術をもったダンサーの肉体がこの映画の最大の見所ですが
それだったら実際に生で舞台を観るのに及ぶわけがない。
ダンサーたちの肉体が物語の中で踊り、
映画が本性としてもっている虚構性と一体となって
その肉体の持つ力と虚構の力が極限まで張りつめ、
ルイーズ・ルカバリエのダンサーとしての肉体も
彼女がもつ社会的な属性も
ベラスケスの絵画に込められた物語も捨てた
肉体でも虚構でもないような
映像的なリアルが立ち上がる瞬間があるわけです。


ん〜。あんまり書くことないな(笑)
やっぱり生で観てみたいというのが本音。
映画でしかできない表現であることも確かなのだけれども。