集合意識

スタートレックには集合意識を持つ異星人に幾つか登場するんですが
代表的なのはボーグとドミニオンです。
ボーグは個性を持たない均質なサイボーグ生命体で
多種族のテクノロジーを吸収するためにナノマシンを注入して同化する。
ドミニオンは「大いなる繋がり」という集合意識を何よりも大事にしていて
それを守るためにその名の通り他の種族を支配している。
どっちもやたら好戦的なのです。

主人公たち惑星連邦の人々は、ボーグの好戦的な態度だけでなく
彼らに個がないことに激しい嫌悪感を覚えているようです。
セブン・オブ・ナインは元地球人で、7歳の時にボーグに同化され
以来十数年間ボーグとして過ごしてきたのだけど
ジェインウェイ艦長は「ボーグに帰してくれ」と泣き叫ぶ彼女を
強引に集合体から引き離し船の一員にしてしまう。
ほとんど拉致監禁です。
艦長の理屈は「貴女は意に反して個性を奪われたのだからそれを取り戻せ」です。

ここら辺のエピソードはやっぱり微妙ですね。
そもそも僕は好戦的なのを除けばボーグは悪くないな、と思ってて
たぶん集合意識につながれるのは快感だと思うのです。

が、最近思うのはボーグもドミニオンも必然的に好戦的なのではないかということ。
強いつながりは、内部に対してはそこから出ようとする者への抑圧として、
外部に対してはつながりを脅かすものへの排他的な態度になる。
全てを同化するか、全てを支配して全てを内部にしてしまえば
後者のような外部からの脅威はなくなる、というわけです。

彼らの集合意識はファシズムやある種のナショナリズムの比喩なのかもしれません。
ちなみにジェインウェイ艦長はセブンに
「ボーグ集合体から我々の共同体の一員になる。私達は一つの家族なの」
というようなセリフを言いますが、
同胞愛はナショナリズムの基本であることはもちろん
上のセリフは初期のナチスとも非常に親和性が高い。
もちろん艦長も(製作者も)そのことはよくわかっていて
常に結束しつつ(セブンには「人間社会には結束力がない」と言われますが)
常に個人である、という微妙な線を綱渡りのように渡っていきます。
たぶん僕らもそうするしかないのでしょうね。