ツァイ・ミンリャン『西瓜』

こんばんわ。チケットショップを3軒まわったけど
前売りもミニシアター回数券も売ってなくて
久々に1,800円払ってしまったwbntです。ああ悔しい。

西瓜を持った女が画面右端に見切れると同時に
画面左の角をシャンチーが曲がっていくファーストショットに見られるように
ツァイ・ミンリャンはかなり緻密に計算された画面構成をする人です。
このシーンなどは画面の端々まで計算された機械的に厳密なショットですが
計算されていてももうちょっと微妙なシーンもある。

シャオカン(リー・カンション)のシャンプーが水面に拡がるとこなんかは
あまりのあざとさに半分呆れながらも
ふわーっと拡がっていく泡の美しさに魅入られてしまうわけですが、
この時、泡の拡がり方はある程度計算されているとはいえ
完全に制御することはできないわけで、
偶発的な泡の拡散を捉え、フィルムに収めることが要求される。

揚げたビーフン(みたいなもの)に火がつくシーンとか
シャンチーが通路ですっころぶシーンとかは
計算でやってるのかハプニングなのかちょっと微妙だけど
どちらも構図なんかはきっちりと決めた上で
その場で起こる出来事をすくいあげる機知も持ち合わせているんだなぁ
と感じさせるシーンなんですね。

特徴的な長回しも、ファーストショットのような
時間性を画面に刻み付けるような計算ずくの部分と、
ブランコで寝ているシャオカンの後ろでスズメが戯れているシーンのような
計算外のノイズを画面に招き入れるような効果と
両方の部分を持っているのだと言えましょう。


関係ないけど。
最初の西瓜を使ったAVの撮影はおそらくツァイ・ミンリャンの独創だと思います。
台湾のAVの事情はもちろん知らないけれど、
日本のAVは僕の知る限り、どれほどフィクショナルな設定
(看護婦とか女子こーせーとか)であっても
女優も男優も本気で感じているという建前になっています。

が、股座に置かれた西瓜を舐めまわされて女優がよがる、
という映画の中のAVはこの建前に合致しません。
そもそも「西瓜を抱えた女=妊婦」というモチーフや
西瓜が「花=性器」ではなく果実であることから考えても
西瓜と交わるというのは子供と交わるというニュアンスが強く
欲望のあり方が余りにも特異で
面白いけどAVとして実用的ではありませんね(笑)

日本人のAV女優(夜桜すもも)はかわいらしいけど豊満だし、
熟女女優(ルー・イーチン)は太ってはいないけれど
年齢的なものからくる弛みを隠すことはできないし、
ますますいい男になったリー・カンションも
一見すると逞しい肉体だけど一枚脱ぐと筋肉の上にうっすら脂肪が乗っていて
そのわずかな贅肉が妙にエロティックだったりする。
贅肉フェチなんだろうかツァイ・ミンリャン

ついでに、シャオカンと激しい濡れ場をやるルー・イーチン、
過去のシリーズではシャオカンの母親役である。
別の人という設定なのだろうか。
それにしてもマザーファッカーではないか。
どんだけ変態なんだツァイ・ミンリャン