『10ミニッツ・オーダー/人生のメビウス』

7人の監督の手による10分ずつのオムニバス。
予算も決められてたらしいです。

噂通りエリセのがすごい!
ヘルツォークのが面白かったのと、ジャームッシュもいい。
てわけで、以上3篇について一言ずつ。


ヴィクトル・エリセライフライン

小さな村の人々の生活が、短いショットで描写されるんだけど、
なんでこんなに?って思うくらい、みんな生きている感じがする。
名前とか、人物としての背景も何もないんだけど、
今までずっとそこに生活していて、これからもしていくだろう、
っていう感じを漂わせてるわけです。

それらの一つ一つのシーンは、
時計の音と水の音とか、縄と蛇とか、
裸足のおにーちゃんと、裸足の女の子、靴を磨くおばちゃん、
ってな感じで自由連想的に結び付けられてるんですね。

んで、ゆるやかに結び付けられていたイメージが、
赤ちゃんの出血という危機的な事態によって、
ギュッと一箇所にまとめられて、
その後、またゆるやかにほどけていく、と。

上手いこと言えないんですけど、
そういうイメージの連鎖がものすごく想像力を喚起して、
彼らはこれまで生きてきたし、これからも人生は続くだろう、
っていうような時間的な広がりを感じさせるし、
彼らの傍らには別の人が生きていて、
そのネットワークがそこら中に広がってるだろう、
っていうような空間的な広がりも感じさせるわけです。


ジム・ジャームッシュ『女優のブレイクタイム』

切り取られた10分という時間の中に、
そのシーンで起こった出来事以外のことに対して、
想像力を発揮させるような仕掛けを仕込む。
っていう戦略でつくられてまして、
まぁ方針としてはエリセと同じですね。

「何も起こらない映画」はジャームッシュの十八番ですけど、
ここでも、クロエ・セヴィニーが10分間休憩する、
ということ以外は何もおこりません。

ただの休憩以外の何事でもないんですけど、
その中で、彼女の事情とは関係なく動いてるスタッフとか、
彼女自身も、音楽を聴きながら、恋人に電話をかけ、
口では愛を囁きながら、身振りでスタッフとやり取りする、
といった分裂的に流れる意識が感じられて、
とても豊かな描写になってるわけですね。


※追記 クソ長いから分割することにしました。
ヘルツォークは明日。