塩田明彦「黄泉がえり」

大資本とテレビも絡んだメジャー映画ってことで
きっついなーってシーンもあるんだけど
厳しい条件下で塩田はそれなりの仕事をした、
なんて言い方ではすませらんないものがあると思う。

たしか青山真治が『塩田明彦復古主義者である』
みたいな事を言ってて、
それが肯定的な意味なのか否定的に言ったのかはわからないけど
光も構図も演出もお手本のように正確な
塩田の映画監督としての資質は
古典ハリウッドの巨匠たちと近いところがあって
陳腐極まりない物語を嘘みたいに美しく撮ることができるかもしれない
なんてことを思わせてくれる。

とは言ってもこの映画が古典ハリウッドのような傑作である
なんて言いたいわけではなくて
というよりそんな風に映画を撮ることは
可能でもなければ必要でもないような気がする。

石田ゆり子がそっと目を覚まして
その横で眠る山本圭壱と娘の3人を写しだすシーンが
陳腐だという感情を抑えて感動的なまでに美しいのは
このシーンが古典ハリウッドの域に達しているからではなくて
塩田が古典的に正確な演出でもって
テレビドラマや低質な映画に対して抵抗しているからだろうと思う。

新作も似たようなメジャー映画にみたいで
たぶん面白いけどクソつまんない映画だろうとは思うけど
この調子で修行していけばいつか傑作を撮ってくれるだろうと思う。