タイミング

登山の途中、山頂に着こうかというところで携帯のメールが鳴りまして
(そんなところまで電波が届くと思っていなかったので驚きです)
友人からのメールは、見れば内容は恋の話。
奥多摩大自然になんとそぐわぬ内容だろうか、と失礼ながらまずは一人で笑ってしまいました。

しかし「これはちゃんと返信をせねばならんなぁ」と思いつつも、
刺すように冷たい空気と暖かな木漏れ日、
限界に達しつつある疲労も澄み切った空気と友人たちと過ごす時間の中では心地よく、
それとあまりにもかけ離れたメールに応えるべき適切な言葉が思考の中にのぼってこなくてしばし唸ることに(ちゃんと返信はしたけれど)

まぁ僕が山にいることなど知らせていたわけでもないし、
もちろん「メールしてくれるな」などと思ったわけでもないのですが、
例えばその時がちょうどロメールの恋愛映画でも観た後であれば、
もっとすんなり友達の恋にも共感できただろうし、
別の言葉で返信していたのかもしれないと思うのです。

仕事が極限に忙しい状況で「今日も仕事なの?仕事と私どっちが大事?」といったメールが来た時の苛立ちとか、
逆に恋人とのロマンティックな逢瀬の時間を引き裂く仕事の催促のメールに、
なんと気の利かぬ上司であろうかと思う、etc...
といった状況は、よくあるシュチュエーションと言っていいかと思いますが、
これらももし数時間タイミングがずれていれば「可愛いヤツめ」と思ったり「やっぱりあの人の下で働きたい」と思ったりするのかもしれないわけで、
ともすればそのタイミングが結婚や転職など人生の重要な局面を支配することもあり得る。

それは基本的には偶然の産物なわけだけれど、
タイミングを逃さず局面を見極める能力というものはあるだろうと思うのです。
先日書いた「幸福を招き入れる」とはそういう能力を言うのでしょう。
はてさて、僕もそんな能力を身につけることができるでしょうか。