キム・ギドク『サマリア』

ギドクの映画の主演女優の顔がどれも好きではなくて
趣味が合わないなぁと思ってたんですが
この映画の主演は二人ともかわいいです。
ハン・ヨルム(ソ・ミンジョン)当時20歳。
『弓』では22歳で16歳の役をやってますが
学歴社会で俳優も大卒が多い韓国では普通のことだそうですね。

クァク・チミンは最初はあんまりだなぁと思ってたんですが
チェヨンが死んだ後から急に顔が変わって
大人の女性の表情とでもいうような色気のある顔をするようになるのですね。
それを際立たせるために前半では、ぬいぐるみを抱いて寝てたり
父親に「あーん」してご飯を食べさせてもらったりと子供っぽさが強調されていて
その辺の演出はかなりあざとい。

しかし、あざといなぁと思いながらも
「やられた!」と思ってしまうのがギドクの腕で、
演技だけでなくライティングからメイクから変えているのだと思うのですが
子供女子高生から援交女子高生への変貌を
実際に画面に定着させているのだからすごいとしかいいようがありません。

展開も負けないくらいあざとくて
援交女子高生チェヨンの穢れを彼女の死後、
ヨジンがチェヨンの寝た相手と寝ることで引き受け
その娘の穢れを、父親が相手を痛めつけることで引き受ける。

自らを穢れや痛みの中に積極的に投げ入れることで
逆に魂を浄化させていくというモチーフ。
目を背けたくなるような痛いシーンや、
得意のお下劣なブラックジョークはありませんが
1部、2部ではポルノグラフィックな描写を控えたおかげで少女たちの隠微な危うさが際立ち
3部の崇高なイメージを引き立たせています。


関係ないけど。
友人が日記で山岸凉子はSだと書いていたのですが、
僕は山岸もギドクもMで、いたぶられるほうに感情移入してると思ってたので、
それを読んでちょっとびっくりしました。
しかしそれは単なる「僕の感情移入」であって(笑)
よく考えるとSだと言われて納得できないでもありません。