「見せ方」について

ライブは10人くらいでの共同発表になるので
集まって練習したりメールで連絡を取りながら話し合いをするのだけれど
「わかりやすく見せること」と「やりたいことを見せること」の間でジレンマがあります。
(共同作曲というものをやるのは初めてなのですが面白いです)

僕にとってはジレンマでもないのですが、これを人に説明するのが難しい。
「観客に媚びて作品の質を下げる必要はないけれどわかりやすくするための工夫は必要だ」
というのが僕の立場でして
「難しいものを簡単にする」のと「難しいものをわかりやすくする」のは似ているようで決定的に違うということです。

話はかわって。
先日、ギャラリーにインスタレーションを観に行ったとき
アーティスト本人の他にその友人が何人か来ていまして、
椅子に荷物を置いて占領しちゃってるし
音楽つきの映像が流れてるにもかかわらず、ずーっと喋っている。
観終わってから図版を見たかったのだけど
相変わらず喋っているにも関わらず抱えたまま渡してくれないし
作品についても少し質問したかったのに割って入れる雰囲気じゃないし…
というわけで溜め息まじりに会場を後にしたのでした。

不愉快な想いをしたからただ愚痴ってるだけじゃないかと言われればその通りなんですが(笑)
作品を人に観てもらえる喜びをもっと味わってもいいのになぁと思います。

「見せたいものを見せる」という姿勢に傾くとプレゼンテーションがおざなりになりがちで、
「わかりやすく見せる」ことに傾きすぎると作品の質を落としかねない。
まぁ本来アーティストは「見せたいものを見せる」べきで
「わかりやすく見せる」のはプロデューサーやキュレーターの仕事でしょう。
僕がギャラリストだったら彼を注意すると思います。
我々のライブの進行が悪いのもプロデューサー不在のためなのでしょう。

しかし、ダヴィンチだってバッハだってそうだったろうと思うのですが
「見せたいものを見せる」ために自分を売り込む自己プロデュース能力は必要でしょう。
前提を共有しない未知の他者の目に自分の作品がどう写るのかを知ることも
作品を鍛える上で重要な契機だと思うのです。
「人に媚びない」というのは作品レベルで考えるべきで
その作品をどう見せるかはまた別の問題として考えられるべきだと思うのですね。