ウディ・アレン『マッチポイント』

ウディ・アレンの面白さは会話にあるというよりも
セリフ回しももちろんそうですが、
顔まで含めたキャラクター造形の上手さにあると思います。

僕はクロエのキャラクターがとても好きなんですけど、まず顔がいい。
育ちもよく人がよさそうで、美人なんだけど華がなく、
かと言って地味というわけでもなく程々な感じ。

大富豪の令嬢であるにもかかわらず、会って二回目のクリスに
アイルランドから出てきた貧しい青年が…」
なんてセリフをサラリと言ってしまう屈託の無さ。
もしスカーレット・ヨハンソンがクロエ役だったらこうはならないでしょう。
エミリー・モーティマーの顔だから嫌味もなくこんなセリフが言えるわけです。

主人公二人の顔も面白い。
二人とも異性にのみアピールする顔だと思うのです。
スカーレット・ヨハンソンって「世界一セクシーな女」に選ばれましたけど、
女性がなりたい顔ではないらしいんですよね。
(とウチの同居人が言っておりましたが、それが一般的な意見なのかどうか知りません)
ぽってりした唇が男好きのする顔って感じですが
ちょっと下膨れで目が小さいし、グラマラスだけどスレンダーじゃないし。

ジョナサン・リス・マイヤーズもそうです。
はっきりした二重、厚い唇とデカイ鼻。
どれも「ハンサム」を構成する要素ではありませんが
フェロモンが出てるのがわかります。

そんな正統派の美男・美女ではない二人だからこそ
お互い熱病だとわかっていながら離れられない二人
という展開に説得力がでるわけですね。


話は変わりますが。
観てる途中では『マッチポイント』ってタイトルはどうなんだろうと思いました。
ノラにマッチポイントまで追い詰められてからの
クリスの一発逆転はおかしいんじゃないかと思ったからです。
テニスでは一発逆転ってないんですよね。
アドバンテージからポイントを奪い返したらデュースになる。

しかし、最後まで観て思ったのは
クリスはノラに勝ったわけでは全然ないんですよね。
ノラを上手いこと始末した時点でようやくデュース。
むしろ死ぬまで喉元にナイフを突きつけられた状態とも言えます。
ゲームとは違って、結婚しようが離婚しようが殺してしまおうが
それでゲームセットではなくその後も人生は続く。
クリスは死ぬまでマッチポイントのまま生きていくしかないわけですよ。