M・ナイト・シャマラン『ヴィレッジ』

僕は映画を観るとき泣くよりも笑うほうで
変なところでゲラゲラ笑っては周りの人に迷惑をかけるのですが
別にそれはコメディに限ったことではなく
ロメロやカーペンターを観てはいつもゲラゲラ笑っているのです。
不気味さとユーモアは似ています。
恐怖もギャグもその唐突な驚きに源泉を発しているからでしょうか。

もう巨匠と呼ばれるにふさわしい上記のお二人も現役ですが
若い世代でギャグホラー界のイチオシはシャマランでしょう。
シャマランが何と言っても偉いのは
本来なら見えない恐怖として存在するはずのものを
あっけらかんと画面に登場させてしまうことです。
(『シックスセンス』然り、『サイン』然り)

見えないことにその恐怖の源泉を持っていたリドリー・スコットの『ALIEN』を
その続編であえて『ALIENS』と複数形にしてしまい
これでもかとばかりに滅多やたらと暴れまくらせた
全盛期のジェイムズ・キャメロンの荒業を思わせます。

この映画に登場するクリーチャーは、冒頭近くでチラッとだけ画面に映り、
その名も「語ってはならない者」であると告げられる彼らは
典型的な見えない敵だと思いきや、またもあっけらかんと画面に登場し、
のっしのっしと歩いているのだからたまりません。

中盤で彼らの正体が明かされ
見えない敵は敵でもなんでもなくなるのですが
それでも再度襲い掛かってくるのだから大爆笑です。
盲目の主人公に目に見えないはずの敵が姿を現して襲い掛かってくる。
主人公も観客もあっけにとられて空いた口がふさがりません。

シャマランはヒッチコックよろしく自作にエキストラ出演することで有名ですが
白人社会のアメリカの映画でインド系の彼が出演するのは
たとえ端役であれヒッチコックほど容易ではありません。
19世紀末のアメリカの田舎にどうやって出演するんだろう、
もしかして今回だけは無しなのかしらん、と思いきや!
執念、と言うよりこの映画の目的はそれなんじゃないの?
と言いたくもなるほど見事な登場っぷり。
本物のバカです。