鈴木清順『野獣の青春』

これはアクション映画なわけで、アクションだって面白いのだけど
例えば銃を使うところだったら
錠(宍戸錠)と三波(江角英明)の出会うシーンの
手品みたいな銃の出しあいとか
三波のショットガンが床下からニュッと出てくるところの
空間の使い方とその唐突さとか。
どっちかっていうとドンパチの魅力じゃなくて
仕掛けの美しさみたいなのが前面に出てますね。

完全防音のマジックミラーの裏側から
ホステスに絡む錠の姿を無音で見るシーンとか
映画館のスクリーンの裏の銃撃戦に
上映中の映画の発砲シーンが入ってくるとことか
その2つの音の使い方を見るだけでも
清順がどれほどフィクションの虚構性(同語反復ですが)を
知り抜いているのかがわかるというものです。

↑この2つのシーンがいずれも「裏側」で起こってるいることは重要です。
カメラがぐるっと反転すれば
追っている警官から追われる錠に視点が移ったり、
銃を向けている突きつけあう錠と武智の位置が入れ替わったり。
いつのまに流れ者の錠が刑事になり、
未亡人のくみ子(渡辺美佐子)は売春の元締めになる。
現実の裏側で虚構の世界が
くるくると反転する鏡像のスペクタクルを展開する映画なのですね。


ところで前から思ってたんですけど、
宍戸錠はなぜほっぺにモノを詰めたんでしょう。
入れないほうがかっこいいと思うんですけどねぇ。