ジャン=ピエール・リモザン『NOVO/ノボ』

長年ゴダールを支えてきた録音技師フランソワ・ミュジー
ゴダール以外の監督と組んだ映画を観て(聴いて)みたい
と思って借りてきたんですけど、内容のほうも面白い映画でした。
ツタヤで、どこにあるのかと探し回って、
「エロティック・ドラマ」の棚で見つけたときは(R15なのですよ)
借りるべきか迷いましたが(笑)

ちなみにこの映画では、ミュジーは録音じゃなくて
音響編集でクレジットされてます。ミックスだけってことなのかな?
海や庭、カフェの音作りなんかは、さすがミュジーって感じなんですけど、
音量のことを差し引いても、ゴダールの映画のように
一つ一つ輪郭がはっきりした音ではないんですね。
結局、ゴダールの音を作ったのはゴダールだということです。
もちろんミュジーの技術があって初めて実現されたものなんですが。

内容はと言いますと、いわゆる記憶喪失系でして、
ノーランの『メメント』と同じく、
10分くらいで片っ端から忘れちゃう男が主人公です。
映画ってのは映像のつなぎ方一つで
いくらでも記憶の捏造をすることができるメディアです。

この映画も『メメント』も、そのテーマを語るダシとして
主人公の記憶障害をストーリーに組み込んでるわけです。
イデアではやっぱり『メメント』の勝ちですけど、
この映画の面白いところは、
記憶についてのメタ的な視点をもう一度裏返して
ストーリーの中に組み込んでいるところです。

例えば冒頭、自販機を殴るグラアム(エドゥアルド・ノリエガ)を
フレッド(エリック・カラヴァカ)が助ける。
で、すぐ後のシーンで自販機を殴るグラアムを
フレッドが後ろから覗くショットになるんですけど、
ここで観てる方は「さっきの場面を別視点で撮ってんだな」
って思うんですが、グラアムはその場を立ち去り、
フレッドは彼を見失うんですね。

メタレベルでの視点移動が行われたのかな?って思った瞬間、
違うよ、こういうストーリーなんだよ。って引き戻される。
ひねりが効いてて面白いです。
説明が解りづらくて申し訳ないけど。

あと、説明的な描写なしで関係を示すのがすごく上手くて、
サビーヌ(ナタリー・リシャール)とグラアム二人のシーンでは
グラアムはどうとも思ってないんだけど、
サビーヌが彼に欲情してるのがすぐわかるし、
イザベル(パス・ベガ)がグラアムの奥さんだってわかるのは
ストーリーがけっこう進んでからなんだけど、
彼女が初めて登場するシーンで「あ、昔の女だな」
ってなぜか知らないけどすぐわかるんですね。
いったいどういう演出の効果なのかさっぱりわからんのですが。


スケベな話。
リモザンは女性の趣味がとても良くて(というか僕好みで)
モデル出身のヒロイン、アナ・ムグラリスは、
古生物学を専攻してた派遣OL。
僕の大好きなナタリー・リシャールは
意地悪で淫乱な女社長という役どころ。
両方ともなんて萌え萌えな設定でしょうか!

いや、ナタリーはわざわざパンツなんか脱がなくても
最高にセクシーだと思うんですけどね。
眠そうで冷めた目が最高ですね。
そう言えばヴィアゼムスキーもそんな目だなぁ。