山極寿一『ゴリラ』

ゴリラの分類は1種3亜種が主流だったんですが、
2種5亜種って分類になってきてるそうです。
それがどうしたって思うとこですけど、
現在の絶滅危惧種(レッドデータ)の指定は
場合によっては亜種まで含まれるそうなんです。

ゴリラは現在レッドデータ指定を受けてるんですけど、
分類が変わるとその指定がかわる可能性があるわけです。
西ローランドゴリラという1亜種だったものが、
西ローランドゴリラとクロスリバーゴリラに分けられることで、
どちらかの亜種が保護指定から外れる
ってことも起こりえるってことですね。

分類の変更によって保護政策が変われば
当然、ゴリラを取り巻く環境も変わり生態系に影響が出るし
そして、国立公園のレンジャーやガイド、
ゴリラツアーなどの観光事業が変わってくれば
地元の人々の生活にも重大な影響が出る。
地元の人々の生活が困窮すれば、
動物食や森林伐採などでさらに生態系に影響が出る、と。

生物の分類なんていうと、
地球環境にも、人間の生活にも関わりのない
純粋に科学的な話のように思っちゃうけど、
科学が純粋に自立した領域で成立することなんてない、
ってことが意外なとこからわかるものなのですね。

さて、全く関係ない方向に話が飛びますけど
ゴリラは亜種間や地域で社会形態の違いが激しくて、
霊長類の生態と社会形態の一般法則(のようなものがあるのです)
にも上手く当てはまらないらしいんですね。

例えばゴリラって言えば子殺しが有名なんですけど、
子殺しが報告されてるのはマウンテンゴリラだけで、
ローランドゴリラ系では報告されてない上に、
マウンテンゴリラでももう10年くらい
子殺しが起こったという報告がなかったりする。

これは、ゴリラが森の種類(竹林、高地林など)や
個体数の密度などの環境の変化に対応して、
社会形態を柔軟に変えていることことからくるそうなのです。
環境に応じていくつもの社会形態をとることができるんですね。
子殺しってのはその一つの形態に過ぎないわけです。

で、環境の変化ってのがどのように起こるかといえば
最近ではやはり人間様の都合によって変わるわけですよ。
つくづく類人猿っていうヤツは、
人間の兄弟であり、人間を写す鏡だよなぁって思うのです。

↓山極さんも関わってるNPOです。
http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/Popof/frame.htm