中島哲也『下妻物語』

僕なんて、こんな顔した(どんなだ?)いい歳のむさい男なんですが、
どうにもおとぎ話には弱くて、こういうの大好きなのです。
駅の待合室のシーンは『シェルブールの雨傘』のパロディで、
中島哲也が、どの程度ドゥミのことを意識してるのかは知らないけど、
かなり近い資質を持ってるんじゃないかと思います。
(真似してるからなのかもしれないけど)

映画でおとぎ話を成立させるためには、
設定や脚本だけではなく画面全体を
きらびやかな夢の世界として仮構しなければなりません。。
そのために必要なのは、ロココの衣装をきたフランス人ではなく、
例えそれが茨城のヤンキーであろうとも、
きらびやかに画面を彩る顔が必要となるのです。

僕はドヌーヴの顔がちょっと苦手で、
トリュフォーの撮る彼女でさえ好きじゃないんです。
しかし、ドゥミは別格でして、ドゥミの映画に出てくるドヌーヴは、
本当に夢の国のお姫様のように見えます(正気か?)
彼は顔を撮るのも天才的だと思うのです。

んで、中島も上手いです。
未だかつて、テレビや映画の画面で、あるいはグラビアで、
小池栄子があれほど艶やかな表情で写っているのを僕は見たことがない。
後半少ししまりが無くなるんだけど、深田恭子も本当にかわいい。
二の腕の太さなんて全然気にならないほどのプリティぶり。
VERSACH(笑)のシャツ着たヤンキー娘(土屋アンナ)を
ここまで綺麗に撮れる人なんてそうはいないだろう。

…えー、ちょっと興奮しすぎましたね。
しかし、彼女達の顔を見るためだけにでも
この映画を観る価値アリだと思います。

顔だけの映画ってことでもないです。
おとぎ話ってことに関わることですが、
シェルブール』を模倣しながら、
恋物語でなく友情を題材に選んだこととか、
下妻と代官山の微妙な距離の設定とか、
(原作があるが、それを題材にしたという選択が重要だ)
冒頭の事故シーンの扱いからアニメやビデオ画像の使い方まで、
フィクションを撮ることに対する意識の高さがうかがえます。