透明迷宮 高橋悠治piano×笠井叡dance@国分寺いずみホール

浅田彰高橋悠治を『図太くも敏捷な野良猫』
という風に例えたと記憶しているのだが、今日もその印象は健在で、
笠井の動きや会場の空気といったものを機敏に捉えながらも、
その音からは、繊細さというものをまるで感じさせない(笑)

おそらく即興だと思われる無調の曲と、
既成曲はバッハを弾いていた。

悠治のピアノを生でそんなに見ているわけではないんだけど、
ペダル使いが印象的だった。
バッハでも意外と細かく踏んでいたし、
即興では打鍵の瞬間にはペダルを踏んで
響きを作り出すんだけど、
リリースではもう踏んでいない。
広がりを持つかに思えた響きが寸でのところで殺されて、
キレのある(文字通り切れた感じの)響きが作られていた。

バッハでは、上声部をシンコペーションするみたいに弾き、
各声部がまるで独立したテンポで動いているように感じられる、
それでいてバラバラになることなく、
3声の曲であれば、3人の子供が一緒に遊んでいるかのような
自由な感じを出してくるのだからすごい。
なによりすごいのは、それだけ機敏に音を操りながらも
図太いという印象しか与えないところだ(笑)

最後にやった1分ほどの曲。
バッハのようでもあり、ジャズの旋法にも聴こえるのだが、
和音は不響で印象としては無調、という不思議な曲で、
クライマックスだったということもあって、一気に異空間に飛ばされた。


ダンスのことなどまるでわからないので、以下は適当。
他のダンサーと比べたことがないのだが、
ある姿勢、例えば片足で直立した状態から、
手と膝を地面につけた状態への移行がとても速い。
即興で踊ってるっぽいので(知らんけど)
ある型から型への移行ではないだろう。

今の姿勢から次の姿勢に移るのに
どのように動いたらいいかってことを、
経験の蓄積により豊かな身体イメージによって、
ほぼ瞬時に組み立てることができるのかなぁ、と。
おそらく体力的にはとっくに全盛を過ぎてるのを
そういう蓄積でカバーしてるのかなぁと思った(知らんけど)

一緒に観た人の話では、
『舞踏ってけっこう言葉だから、
本とか読まないとわからないかも』ってめんどくせえな、おい。
しかし、このままわからないのも悔しいから、読んでみるかね。