若松孝二「十三人連続暴行魔」

死ぬ直前の阿部薫が音楽をやっていて、
河原でサックスを吹くおにいちゃん役で出演もしている。
それが観たくて借りたわけでもないんだが、音がすばらしい。

銃を密造した主人公が昼下がりの団地を
自転車でぶらぶら走っているのだが、
突然真上からのショットになって、
ゴツゴツという金属音と共に音楽がかぶるのだ。
まだ事件は何も起きていないというのに
ものすごく嫌な気分にさせられるシーンである(笑)

タイトルの通り、そのあと暴行が続くのだが、
映画では結合のシーンが写されることはないので、
殺される人たちは、何よりも
ドンッ!という拳銃の音によって犯されると言うべきだろう。
侯孝賢にもこれくらいの演出をしてほしかった(しつこい)

基本的に主人公の動機はまったくわからない。
もうしわけ程度に成田空港問題を出してきたり、
盲目の女性と交流させてみたりしているのだが、
これらが犯罪の理由だというよりは、
政治的に闘争する相手を失い急速に白けていった
70年代末の空気(生まれたころだから知らないわけだが)
を敏感に反映しているんだろう。