関係あるようなないような話

『他者を手段としてのみならず、同時に目的として扱え』
というカントの言葉があります。

性的な充足感(性器的なものだけではなくて、恋愛のという意味で)は
他者を手段として扱うこと無しには満たされません。
マゾヒストやオナニストであってもそうでしょう。
しかし、相手が喜ぶ顔を見て初めて自分も満たされる
という面が性行為を含めた恋愛一般にありまして、
そこらへんが『同時に目的として扱う』に対応するわけです。

話は飛びますが、ヨーロッパではほとんどの国で売春が合法で、
先進国では日本とアメリカだけが違法です。
アメリカで性犯罪率がずば抜けて高いことや、
日本のポルノや風俗産業の異常性は
おそらくこれと関係があると思います。

この場合、男性に限った話ですが、
日本人やアメリカ人は、性というものが
『他者を手段としてのみならず、同時に目的として扱』うものだ
ということを理解していないのでしょう。
性が必然的に他者を手段として扱うという事実から
目を逸らすために、売春を違法とし
セックスを普段は自分の目の届かないところに押し込めようとする。

皮肉な話ですが、普段から抑圧している分、
いざセックスをする段になってみると
手段として扱うことの暴力性が前面に出てくることになり、
相手を目的として扱うことができなくなる。

その点ヨーロッパ人は賢くて、
性にまとわりつく暴力性をよく知っていて
それを抑圧するのではなく上手く飼いならそうとする。
だからこそ『同時に目的として扱う』のも上手いわけですね。

念のため。
ヨーロッパがそれほどすばらしいかって言うわけではなくて、
日本ほどではないにしろ、セックスワーカーの人権は低いし、
ヨーロッパ人のレディ・ファーストは
女性を人格として扱わないからこその文化だって話もあります。