ガス・ヴァン・サント「小説家を見つけたら」

アメリカ社会を映画で描くのは難しい。
(だろうと思う。行ったこともないのでホントは知らないが)
おそらく映画の撮影技術は、人物撮影においては
白い肌を撮ることを前提に作り上げられてきたからだ。

人種のるつぼであるアメリカでは
白い肌だけを撮ることでは社会を表象できないのだ。
プエルトリカンっぽい少年の路上ラップで始まり、
ブロンクスの黒人少年とスコットランド生まれの白人の小説家という
異色の(←文字通り!)組み合わせの友情を描いたこの映画で
ヴァン・サント(調べたらこれが苗字らしい)は果敢にその難題に挑み、
すばらしい成果をあげている。

ヤンキーススタジアムのロングショットもいいけど、
夕暮れのオレンジの光の中の二人が一番いい。
白い肌と黒い肌を同時に撮るにはどうしたらいいか
ということを慎重に考えた結果だろうと思う。
フォレスターの小説が"sunset"なのはやりすぎだと思うが(笑)

このシーンでのショーン・コネリーの寝顔は
白い肌だからこそ撮れる画だが、
ジャマールが夜の街を歩き、
彼の顔がパトカーのランプに照らされるシーンなんかは
黒い肌だから撮れる画だろうと思う。

画のことばっかりになってしまったけれど物語もとてもいい。
ラストの展開なんて、水戸黄門ばりに見え見えだけど
それでも目頭が熱くなるってもんである。
ヴァン・サントの最新作「エレファント」は
例のコロンバイン高校の事件を描いてるわけで(観てないけど)
彼は結末が見えてる物語をいかに語るか
ということに賭けてるんでしょうね。