ティム・バートン「マーズ・アタック!」

CGがすごいと思った映画と言えばまずは「ターミネーター2」で
この世にありえないものをコンピュータの力で作り出してしまった
というところががすごいわけです。
もう一つは「フォレスト・ガンプ」で、
こっちはあり得たかもしれない架空のシーンを
CGとはあまり意識させずに画面にしてしまったのがすごいわけです。
現在の映画でのCGの使われ方は
この2つのどちらかのバリエーションじゃないかと思うんですが
この「マーズ・アタック!」という映画はそのどちらでもないんです。

例えば「インデペンデンス・デイ」って映画は
ターミネーター」の延長上でCGを使っていて
観客が今まで見たことのないようなすごいUFOが登場するわけです。
あれはあれで面白いのですが
『誰も見たこともないUFOなんて映画の中では見飽きちゃってる』
っていう矛盾した状況が現在の観客の中にはありまして、
ティム・バートンが頭がいいと思うのは
あり得ないけど誰もが前に見たおぼえのある空飛ぶ円盤を
見たことのある形のまま再現してしまうところですね。
あんなチャチな円盤をCGで大船隊にして飛ばしちゃうのを観ると
こりゃすげえや!って思ってしまうわけですね。
見たことがない物がダメなら見たことがある物でやってしまえ
っていう逆転した発想の力の勝利ですね。

言うまでもなくこの映画のテーマは
コミュニケーションの齟齬と回復なわけですが
通常あり得ないようなコミュニケーションの数々に
笑いながらも圧倒的なリアリティを与えているのは
ティム・バートンという人の圧倒的な想像力の力なのでしょう。
ちなみに僕が一番感動したのは
報道官が変装した火星人を口説くシーンなわけですが
恋する相手ってのは結局のところ火星人のような存在だ、
などと言っては言いすぎでしょうか。