ジョージ・ルーカス『スター・ウォーズ エピソード1,2,3』

ここ数年観た中で最もわけがわからない映画です。
映画を観ていてこれほど目が点になる体験はそうありません。
さっそく図書館で旧3部作のビデオを予約してきました。
自分はスタートレック派だから、という理由にもなっていない理由で
今まで観ないでいた自分を恥じます。
まぁ映画版のスタートレックはクソつまらないですが。

その枠を一歩も二歩もはみ出して奇形化しているとは言え
スピルバーグの作品が「映画」というの枠内に留まり、
キルビル』や『マトリックス』が一歩も映画という枠から出ないのに対し、
ルーカスはもはや映画のことなんて考えていないように見えます。

彼が黒澤を大変に尊敬しているのは有名な話で
チャンバラ好き、合戦好きも納得できるし
彼のヒューマニズムも理解できようものなのですが
その最大の見せ場であるはずの大群衆の合戦シーンで
人間を全く撮ろうとしない!
1の平原の合戦はロボット軍団vsクリーチャー軍団だし
2の集団チャンバラではジェダイ騎士団に一部人間が混ざっているとは言え
かぶりもの軍団(ジェダイ)vsロボット軍団、そしてクローン軍です。

大軍団を画面に映すことの面白さは
一兵士でありシステムの一部である人間が
同時に人格(個性)を持った者として現れるという点です。
そしてそれは顔に表れる。
ルーカスはカッコイイ群集シーンを撮るという
普通の映画監督だったらだれでもやってみたいだろうと思われる欲望を放棄しています。
わけがわからない人です。

とりあえず彼が「人の顔」を全く信用していないことは伺えます。
主人公を導く哲学者がカエルみたいな着ぐるみを着ているし
旧3部作では最強の敵がマスクを被っていました。
そして今作は「彼はいかにしてマスクを被ったのか」という話なのですから。

3作最大の見せ場であるはずの
アナキン(ヘイデン・クリステンセン)vsオビ=ワン(ユアン・マクレガー)の師弟対決は
パルパティーンvsヨーダの老人対決と同時進行するのですが、
かぶりもの皇帝とカエルの着ぐるみの対決の方が
メインよりも明らかにアクションも演出もキレがいい(笑)
もしかすると生身の人間を撮るのが苦手で
本人もそれを十分理解しているのかもしれません。

あふれんばかりのヒューマニズムと根源的な人間不信。
サーガ的世界観とそれにあるまじき内面描写。
超大作と呼ぶにふさわしい錯乱っぷりです。