木下雄介『水の花』

上映後に監督と宮台真司トークショーがあったんで
どうしてもそれに影響されちゃうんですけど…。
まぁとにかく感想を。

がっちりと構築されたドラマではなく
幾つもの兆候を持った細部が繊細に組み立てられ
その一つ一つのが有機的に響き合い
一つの世界の形を浮かび上がらせます。

例えば美奈子(寺島咲)と幼馴染の少年の対面になるシーンや
保健室で寝ている美奈子の姿などには
そのようなセリフや説明的な描写が一切ないにも関わらず
「中学女児の性」という兆候が色濃く漂っています。

そしてその兆候は、後でわかる
主に母親(黒沢あすか)との関係が原因の美奈子の性嫌悪や
慣れないホステスをやっている(らしい)母の性、
そして鮮烈なラストショットなど、
その後のシーンと複雑に響き合うわけです。

それだけでなく、そのような観念的な操作を振り切って現れるリアルさ。
宮台は優(小野ひまわり)のセリフが完璧だと言っていたけど
僕は違和感たっぷりで「そんなこと言うか!?」
って思いながら見てたんですが、それが「すごい」事にはやはり同意します。

7歳の子供には無謀なんじゃないのか?と思わせる
ママゴトのシーンの長回し&長ゼリフ、
多少セリフを噛みつつ、会話としてはかなり無茶なテンポですが
このシーンでの二人の幼い女優の作り出す時間の密度は
聡明な監督の意図を超えた圧倒的なリアルさがあります。
その後の庭のバレエシーンなんて
美奈子じゃなくて僕のほうが泣きそうでした。
もちろん意図を超えたものを引き出す勘があればこそ可能なわけですけどね。


↓以下、うろ覚えですが、
「普通、通過儀礼って子供には子供にしか見えない世界があって
そこを脱して言葉をもった社会的存在になるって話なんだけど
この映画は逆ですよね?」という宮台に対し、
トリュフォーの『大人は判ってれない』のような世界を
主人公が徐々に発見していくという話にしようという構想でした」だってさ。
あったまいいなぁ、僕より年下なのに。感動しちゃいます。