表情の美学

マンガやアニメでは美男美女キャラってのは
表情が硬くて動かしづらいってのが一般的に言えると思います。
別に動かせないわけではないんだけど
デフォルメしちゃうと顔が崩れて
「整った顔」というアイデンティティが失われるからですね。

よく少女マンガで「私、美人じゃないし…」
って言ってる主人公が明らかにカワイイことがありますが、
そういうタイプの主人公(キャンディなど)はペロっと舌を出したりします。
この種マンガにおける典型的美人(お蝶夫人など)は表情を全く変えません。
ここでは実際の顔の造形よりも、そういった差異化によって
美人かそうでないかが描きわけられているわけです。
あとは美男美女キャラに表情をつけるために
八頭身をいきなり二頭身にするテクニックなんかがありますね。

宮崎でも事情は同じで、ラナとモンスリーちゅわんは
コナンやダイスに比べると圧倒的に表情に乏しい。
これは男女の差ではなくて設定の差だと思います。
同じ男の主人公でもパズーは表情が硬い。
2番手主人公たち(アシタカやハク)はもっと硬い。
野生児コナンは2枚目ではないのですよ、多分。
まぁ作画の大塚康夫による部分もあるのかな?

千尋は女性主人公としては例外的に多彩な表情を持ちます。
トンボも多彩。要は彼女らはブサイクキャラなのですね。
そして恐ろしいことにポルコは豚のくせに表情が硬い。
豚だから動かしづらかったのではないはずです。
怒って怒鳴る場面などではちゃんと動いていましたから。
そう、彼は2枚目だから顔を崩さないのです!
そう考えると圧倒的に絵描きである宮崎も
ある程度はアニメを記号として捉えていることがわかります。

まぁしかしコナンの表情の多彩さは
そのままストレートにこのアニメの多彩さにもなっていて
ラナにほのかな恋心を抱く思春期前のオスの表情や
モンスリーちゅわんに対峙した時の慈愛に満ちた表情、
ジムシーとの友情におけるオトコの表情など
他の作品ではとても味わえない細部が楽しめるのですね。