長谷部安春『みな殺しの拳銃』

ハードボイルドな生き方ってのは人生の問題じゃねえのさ、
そりゃあお前さん、スタイルの問題なのさ。
物語に意味を求めるなんていうのは野暮ってもんさ、
そんなことをすれば人生になっちまう。

ご都合主義が目立つストーリーも
宍戸錠のかっこよすぎる立ち姿も
ケン・サンダースが歌う渋すぎる歌も(CD売っていかなぁ)
すべては徹底的にスタイルのために奉仕する。
それこそがハードでボイルドな生き様ってもんだろう?

なんで三郎(岡崎二郎)の運転する車はやくざの車を振り切れないのかって?
ハードってのはそういうもんだからさ。
なんで決闘の場所にはあんなに風が吹いてるかって?
それがボイルドだからさ。
言葉一つ発することもできずに愛する男に殺される女。ハードだねぇ…
兄が息絶える道をただ一人疾走する弟。ボイルドだねぇ…

黒田(宍戸錠)と白坂(二谷英明)が殺しあうことくらい
最初のカットに二人が登場した瞬間から
観客全員にわかってるし、きっと二人にだってわかってたのさ。
二人はそれを避けようともしない。
形の上では避けるフリだけはするけどね、
なぜってそれがスタイルだからさ。まさに形だけ。
でもね、お前さん。形だけだからってバカにしちゃいけないよ。
スタイルを貫くのに命を賭けるのがハードでボイルドな生き様なんだから。
かっこいいじゃないの。泣けるじゃないの。