ジャン=リュック・ゴダール『映画史特別編 選ばれた瞬間』

「35ミリフィルムで完成した最新作」ということで観にいってきたんですが
フィルムになってる以外は内容が新しくなってるわけじゃなくて
綺麗になったただの編集版でした。
まぁしかし、1bから4aを観る、などという視点や
全体を包括的に観る視点を採ることも比較的容易になります。
僕みたいなアホウにも易しい映画史特別編ってわけですね。

コマ送り(?)のジュリー・デルピーの映像に『狩人の夜』の映像が重なり、
その上にボードレールの詩(?)の朗読が被さる。
別の時系列属し、まったく意味を剥ぎ取られた映像は
そこに写っているモノがジュリー・デルピーなどではなく
フィルムに刻み付けられたジュリー・デルピーだったものの影が
さらにスクリーンに投影されたものでしかないということを雄弁に語ります。

「全く考えられなかったようなもののモンタージュ」の変形ですが、
そこに映し出されたものは、過去に起こった出来事の
単なる影のイメージでしかないわけではなく
思考され編集され焼き付けられて映し出される過程で
新たなモノとなって現れます。

その際に重要なのは、その映像が
デルピーとも狩人の夜ともボードレールとも無関係な
全く新しいモノとなって現れるのではなく
それらの記憶を留めたままで別のモノとなって立ち現れるということ。
この『映画史』は過去の映画の歴史の映画なんぞではなくて
過去の映画の上に新たな歴史を築く映画なのです。