小津安二郎『宗方姉妹』

新聞小説を原作にしたメロドラマで
お昼の1時くらいにドラマ化されれば
さぞかしドロドロになることでしょう。

しかし小津が撮るとさすがにそうはならず、
満里子(高峰秀子)以外の人物はかなり抑えた演技をしています。
三村(山村聡)は暴力シーンなんかもありますが、
そんなに感情を表に出してるわけではなく、
抑えているからこそ、最後に感情を爆発させる
平手打ちシーンの強烈さが際立ちます。

最後までほとんど表情を変えることのない節子(田中絹代)は
まるで能面のようだからこそ、
その下に隠し持ったラストの狂気じみた決意が際立ちます。

全編を支配する強い感情の渦巻きは、翻って、
薬師寺のシーンのツーショットなどの
抜けるように澄み渡った静けさを際立たせます。

微妙な感情の彩がかすかに響きあい
ゆっくりと表情を変えていく『東京物語』のような作品だけでなく
静と動がダイナミックな弁証法を形作るような映画もとれるわけです。
すごいですねぇ。