ジャン=リュック・ゴダール『映画というささやかな商売の栄華と衰退』

フィルムではなくビデオカメラで撮影されたから。
なのかどうかはよくわからないのだけど、
オーバーラップやズームなどが多用され、
撮影されたモノ(対象)よりも、
映像の処理の方に嫌でも目がいくようになっています。

この映画を観ていて僕は「ゴダールはセクシーだ」
などという、わけのわからないことを思ったのでした。
では、無理やり説明を試みようと思います。

セクシーといっても、美人であるとか、
ダイナマイトボディを持ってるわけではありません。
マリア・ヴァレラという女優も特別美人ではないんですが、
(好みの問題なんで、異論はあるかもしれませんけど)
ゴダールによって撮影され、編集された画面上で
彼女はこの上なく魅力的な女優に変身して、
僕はそれに魅了されてしまうわけです。

別のシーンで、二人の女優をオーディションをしているんですが、
手前の女優がしゃべってるときに奥の女優にピントがあっていて、
奥の女優がしゃべってるときに手前の女優にピントがあっています。
カメラは、手前の女がしゃべっているのを聞きながら
手持ち無沙汰な表情をしている奥の女を捉え、
手前の女は「耳飾が綺麗だ」と褒められているのですが、
その耳飾はピントが合わずぼんやりと揺れているのです。

なんとも思わせぶりでドキドキしてしまうシーンです。
自分に気があるようなそぶりをしてくるくせに
何もしてこないし言い寄ってもこない女のようなのです(笑)
具体的に何か誘惑じみたことをしてこないので、
逆にすべての仕草が、
僕にとっては誘惑として機能してしまう、とういわけですね。