万田邦敏「UNloved」

主人公の光子が自分を変えない人である
ということは観ていればすぐわかる。
彼女はずっと同じことしか言わないし、
同じように手すりを握り、同じように天気を確かめる。
しかし、変わらないの光子だけではない。
実は英次と弘も最初から最後まで全く変わっていない。

英次は光子の言葉によって自分の傲慢さに気付くのだが
「どうしたらいいんだ」なんていきなり前妻に電話するわりには
話の最後の方にはまた傲慢なセリフを吐いている。
てゆーか、夜中に一年ぶりの電話を前妻にかけるなんて行為が
そもそも相手のことなど考えない傲慢さの現れだ。

弘も優柔不断なダメ人間である自分を呪い
変わりたいと思い続けるのだが、
結局最後までだらしないヤツのままである。

普通の人間ドラマ、特に恋愛モノは、
出会いとか、愛し合うこととか、別れとかによって
登場人物たちが最初とは違った存在になっていく
その過程を見るものなわけですけど、
この映画では3人の主要人物は全く変わることなく
ただ3人の関係だけが変わっていく。

この関係を変化させるものは
外部からやってくるような事件でないし、
ましてや彼ら自身の中にあるわけでもない
(何しろ彼ら自身は何もかわらないのだから)

まるでシステムが自動的に作動しているかのように
3人の歯車は噛み合わさったかと思うと
金属の擦り合わさるような嫌な音をたててはずれ
再び別の歯車と噛み合わさるのだ。
異常に張り詰めた緊張感だけが観る者の心を刺すが、
イタキモチイ、くらいが気持ちがいいもんである。