ジャック・ドゥミ「ロバと王女」@ル・シネマ

ドゥミはこの映画の中に
無時間的な空間を作り出そうとしたのではないか。

そう考えた時に最初に目に付くのは
街の人々が静止した中をスキップであるく王女である。
ついで、小屋の前での唐突なスローモーション、
幽体離脱した主人公二人が腹いっぱいお菓子をたべるシーン、
そして、破けた天井の穴を逆行しながら帰っていく妖精。

これらは全て、この映画が
通常の時間の外に存在していることを示している。
そして、ラストのヘリコプターで乗り付ける王。
この破天荒なシーンによって、
映画は童話的な物語として閉じることも許されず、
(つまり物語内的な時間として閉じることなく)
現実でも物語でもない、時間のない空間に放り出されてしまう。

しかし、この無時間的な空間こそが
ドゥミが一貫して作り出そうとしてきた
映画的な空間そのものではないだろうか。

傘を差した二人が歩かないまま道を進む
シェルブール」の町並みも、
水平と少女がスローモーションで駆け出した
「ローラ」が住むナントの遊園地も
このわけのわからない空間に通じているんじゃなかろうか。