音楽批評は可能か

なぜ僕は音楽について書けないのかと
ここ数日考えていたのだが、
僕が音楽の全体性を信じていない、
というのが一応の結論のような気がする。
ちと微妙な言い方なので説明を。

例えば映画であれば、
あらゆる映画をなどと言わないが、
かいつまんでそれなりにいろんな映画を観ていて、
なによりその審美眼の基準となるフォーマット
(蓮實フォーマットと言っていいだろうね)
を信頼している、ということ。

僕が蓮實重彦と同じように映画を観ている
などとは恐れ多くも思わないけれど、
これでいけるはずだ、と思って書いてはいるわけです。

小説について言えば、僕はいろんな小説を読んでます、
などとはどう考えても言えないけど
どうやらそれなりに慣れ親しんだ
文芸批評フォーマットを僕は信頼しているからこそ
読んだ小説の感想を書き散らせるわけですね。

さて、音楽についてなのだが、
あらゆる音楽を聴いているなどとは言えないが、
映画などよりよほど詳しいし、
自分の耳にはそれなりに信頼を置いているけれど、
それが普遍的な聴き方だとはとても思えないわけです。

よく考えてみれば、映画だって同じなんですけどね。
蓮實重彦は自分の審美眼が普遍的なものではない、
ということは十分にわかっていながら
それでもそれを無根拠に信頼する
という方法をとっているはずなんですね。
批評ってのはそういうもんで、
マジで書くなら僕もそうするべきなんでしょう。
難しいですが。