竹中直人「連弾」

家族の再生の話というのは
フィクションの世界ではありふれたテーマに属し
この映画もそのバリエーションであると言えます

典型的なパターンとしては、
家族内のいろんな問題が顕在化し、
それと共にいろんな出来事が家族を襲うけど、
最後は家族という制度を再選択する形で
希望をもって生きていきます。
という感じになるわけです。

この映画の面白いところは
大筋で上のようなパターンをなぞりながら
結局、主人公夫婦は離婚するという点にあります

竹中直人天海祐希(両方とも役名をわすれても
伝統的な家族システムからすれば
父親、母親としての役目を全うしておらず
二人の子供もふくめて4人全員が、
一般名詞としての『家族』と言うもののイメージ
自分の家である『佐々木家』に対する感情にして
てんでバラバラなわけです。

不幸な結末を乾いた描写で笑い飛ばす、
というのも家族物フィクション
(この場合は再生じゃなくて離散だけど)
の典型なわけですが、
この映画はそういう表現をとりません。

4人それぞれの生々しい性の問題が浮上してくる
ラスト近くの母と姉、父と弟の会話は
描写こそコメディタッチを崩しませんが、
内容的にはシリアスです。

お互いてんでバラバラな方向を向いているし
結局離婚はしてしまうけれども
それはそれでいいじゃないか。
といった感じで、家族の離散を不幸なこととして
そういう選択もアリだ、という形で明るく肯定し
そんなところがすばらしいわけです。